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電磁波MonthlyWatch バックナンバー
 
特集 家庭の電磁波 第7回(2006年8月 No.1)
電磁波研究の最前線
電磁波なび

もういちど電磁波を考えてみると・・・

みなさんが「電磁波アブナイ」と考える場合、電磁波の脅威は周波数帯によって異なる、ということは、なんとなくご理解いただけるかと思います。

この周波数帯。家庭内の多くの家電製品は、高周波でも低周波でもない「中間周波数帯」にあります。では、「中間周波数帯」の脅威はどれほどのものなのでしょうか。IH調理器、パソコンやテレビのモニターは、まさに中間周波数帯「300Hz−10MHz」の製品です。今回の電磁波MonthlyWatchでは、中間周波数帯の電磁波について、WHOの報告資料(2006年2月発表)を以下ご紹介します。

WHOファクトシート「電磁界と公衆衛生:『中間周波(IF)』」日本語訳

過去1世紀の間に、人工の電磁界への曝露が増えています。電磁界(EMF)発生源の使用が広くいきわたるにつれて、人間の健康への有害な影響について公に議論されるようになりました。世界保健機関(WHO)は公衆衛生の防護の一環として、またこれらの懸念に応えるため、0から300GHzまでの周波数範囲に含まれる電磁界の健康影響に関する科学的証拠を評価する国際EMFプロジェクトを立ち上げました。国際EMFプロジェクトは、知識の重要な不足部分を埋め、EMF曝露を制限する国際的に受け入れられる基準の開発を促進することを照準とした研究プログラムを奨励しています。

EMFに対する社会的懸念は0−300Hzの超低周波(ELF)電界と磁界(例えば送電線を含む電力供給)への曝露の影響、および10MHz−300GHzの無線周波(RF)電磁界(電子レンジ、放送用や携帯電話を含む他の無線送信装置など)への曝露の影響に及んでいます。この2つの周波数範囲については、多くの科学的研究が存在しています。本情報シートでは、電磁スペクトルの中間周波(IF)領域をELFとRFの間の領域;300Hz−10MHzと定義しています。IF電磁界の生体影響や健康リスクに関する研究の数はELFやRFと比べると相対的に少ないのです。

これは一つには、IF領域の電磁界を発生する装置の種類が少ないという事実があります。しかし、これらの装置は現在では消費者や産業界に普及していますので、IF電磁界が人間の健康に及ぼす影響を評価することは重要です。本情報シートは、IF電磁界の既知の健康影響を論じ、さらなる研究のための提言を行っています。

●IF電磁界の発生源

IF電磁界の発生源としては、次のものが一般的です。

産業界:誘電加熱シーラー、誘導電気加熱炉、プラズマヒーター、放送用および通信用の送信設備
一般社会:家庭用の電磁誘導調理器、非接触型リーダー、電子式商品監視システムと盗難防止装置、コンピュータモニター、TVセット
医療機関:MRIシステム、電磁神経刺激装置、電気手術装置、その他の医療用装置
軍事:動力装置、潜水艦の通信用送信設備と高周波送信設備

医療用の診断・治療機器を除いて、IF装置による人間の曝露レベルは通常、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が勧告している制限値を下回っています。しかし、少数のグループの労働者(誘電加熱シーラーや誘導電気加熱炉のオペレータ、高出力の放送設備の近くで働く一部の軍事要員や専門技術者など)はかなり高いレベルのIF電磁界に曝露される可能性があります。

●電磁界は人体にどのように影響を及ぼすか

電磁界(主に電界)が生体系と相互作用を起こす幾つかのメカニズムは、熱的メカニズムと非熱メカニズムのどちらについても証明されています。限定的な障害は、一定の曝露条件下で最低のしきい値をもつ有害影響(熱的影響あるいは非熱影響)によって生じます。IF領域の高周波側の強い電磁界は熱的な損傷(比較的ゆっくりとしたプロセスで、組織が一定時間、高い温度に維持されることが必要)を引き起こしますが、身体内の電流への急性曝露による最もはっきりとした障害の幾つかは膜興奮によって生じます。この非熱メカニズムは外部の電磁界で誘導される膜電位の変化によるもので、例えば、末梢神経と筋細胞への刺激が生じます。もう一つのメカニズムはエレクトロポレーションであり、電磁界によって細胞膜に過度の電位が誘導されたときの細胞膜の可逆的あるいは不可逆的な分断です。これは電気ショックによって組織の損傷を誘発することがありますが、人間の組織への薬物の透過性を高めるために短い電界パルスを用いるなど、治療を目的とした研究も行われています。

外部のIF電磁界は身体内にこれらの影響を引き起こす可能性がありますが、それは環境の典型的な電磁界レベルよりも何倍も高い電磁界強度のときだけです。

●報告されている生体影響と健康影響

18世紀から、電界と磁界は健康に良い影響がありますと言われて来ました。さらに、最近の医療現場では、IF領域のパルス状のEMFが、骨折治癒機転や神経刺激・再生の治療に使われています。しかし、家庭と職場の両方で技術に伴う健康への危険について懸念の声が聞かれるようになってきました。これらの懸念の中には、労働者から寄せられる自律神経障害(例えば腫れもの、指の刺すような痛み、頭痛)の訴えや、一般の人から寄せられるコンピュータのモニターやテレビを発生源とするIF界の健康への悪影響に対する懸念があります。これまで以下の調査研究が行われてきました。

・人を対象とした研究−これまで行われたIFの曝露に関する疫学的研究はそのほとんどがコンピュータモニターの使用に伴う生殖および視覚器官への影響に焦点をあてたものです。いくつかの主要な研究は、コンピュータのモニターは非常に弱いIF界なので人の健康にとって脅威とはならず、生殖過程や胎児にも影響を及ぼすことはないと結論づけました。さらにこうした曝露と眼の異常との関係についても認められていません。女性の通信士および電信技師を対象とした大規模な研究では乳がんのリスクに若干の増加がみられました。しかしながらこのグループに属する労働者は同時に、このリスクの増加原因となり得る他のいくつもの要因にさらされています。生物学的変動性が非常に高いこととEMFのパラメータの数が多いため、人の健康に関するこれらの研究のいくつかについてその重要性を明確に結論づけることは困難です。IF発生源に起因する最も重大な健康への危険の中にはEMFの間接的作用に関係しているものもあります。例えば電子式盗難防止システムが放出するEMFは、体内埋め込み式の電子医療器具(例えばペースメーカー、神経刺激装置)に干渉する可能性があります。

・実験研究−IF電磁界を使用した細胞の研究で発表されたもののうち、独自に確認された生物学的影響を示したものはごく少数です。マウスを使った研究では、KHz帯の低強度磁界信号への曝露による疾病率、行動の変化あるいはリンパ腫の発生はみられませんでした。マウス、ラットおよびヒヨコの胚の生殖と発育に関する少数の研究およびそのほかの少数の研究は骨格にわずかな異常が生じる可能性を示唆していますが、全体的には奇形の増加に対する明確な根拠は提示されていません。

極低周波電磁界(ELF、交流電流の周波数を含む)および無線周波数電磁界(RF、移動電話通信を含む)と比べ、IF電磁界の影響に関する研究はこれまでほとんど行われていませんでした。居住および労働環境で普通に見出されるIF電磁界への曝露が健康へ悪影響を及ぼすということを確信させる科学的根拠はありません。この結論はIF電磁界について行った研究に基づいている部分もありますが、同時にIFの周波数によっては、IF電磁界は人体に対してELF電磁界やRF電磁界と同じように作用するという事実にも基づいています。

●国際基準

ICNIRPはWHOが正式に承認した独立した科学委員会で、0〜300 GHzの周波数帯に属するすべてのEMFに対する曝露限度値のガイドラインを発表しています。IF帯の曝露限度値のガイドラインは、外界と身体とのカップリングおよび生物学的影響の周波数依存性についての仮説に基づき、健康に対し起こりうる悪影響に関する科学的文献を厳格に審査し、ELFとRFの帯域から限度値を推定することによって定められました。

●今後の課題

ICNIRPのガイドラインのレベルを下回る曝露でIF界が健康に対してリスクがあることを示唆する科学的根拠はありません。しかし現在の知見の不確実性を解明するには、より一層質の高い研究が必要です。今後の研究については以下の主要分野が確認されています。
・疫学研究−疫学的調査は、かなり高い数値で曝露した母集団で質の高い曝露データを収集し、それによって十分な統計的検出力を得て、妥当な健康結果を特定できる可能性が予備的研究で得られた時にだけ実施することが推奨されます。

・曝露評価−現在の労働環境および居住環境におけるEMF曝露の程度およびタイプの特徴をより明確に把握することが必要です。IF界が使用されている工場およびその他の労働環境において、設備が適切に運転されており曝露がガイドラインの数値を超えていないことを保証するために定期的な検査が実施され文書化されなければなりません。

・動物実験−今後の動物実験は、人が工業および他の発生源から曝露する条件と同じ曝露条件を使用するようにすべきであり、さらにより高い曝露レベルの研究を試みるべきです。明らかに疑わしい点が確認された場合は、こうした動物実験を補足する細胞あるいは組織の研究を実施することによってIF電磁界が生命体にどのように影響を与えるのかをはっきりさせることができます。

・生物学的相互作用−特にパルス状の電磁界あるいは複雑な波形を持つ電磁界の曝露ガイドラインをより正確にするために、生物学的相互作用と危険閾値についてより包括的に理解することが必要です。

・線量測定−IF電磁界に曝露した人の体内に誘導された電磁界を計算することが可能なコンピュータによるモデリング技術が存在しています。この技術の最も先端的なものは実際の計算結果に基づく人体模型を解剖学的に使っています。この手法は特にリスクの評価と、測定されたIF電磁界が間違いなく曝露限度値以下であることを検査するのに適しています。この評価において、必要に応じて女性と子供の人体模型の使用も考慮されていることが重要です。

●この問題に関するWHOの活動

WHOの国際EMFプロジェクトは、研究結果を再検討してEMF曝露のリスクの評価を行うプログラムを確立しています。内容は広報資料を制作すること、およびEMF曝露基準を策定する取り組みを統一するために諸基準を世界中から集めることです。がんを含むEMF曝露の健康へのリスクについては、WHOのがん専門研究機関である国際がん研究機関(IARC)およびICNIRPと共同で評価が実施されています。

今後の一層の研究を!!

翻訳は以上です。

ファクトシートにも書かれているように、今後、疫学研究や動物実験等、一層質の高い研究が望まれるところです。

次回は「子どもと電磁波」の続編。お子さんの電磁波影響の大きさを再検証します。次回の電磁波MonthlyWatchをお楽しみに!